台北で行われる公演のジャンルは多岐にわたります。うち中国から伝わった「京剧」は、演剧、音楽、舞踏、曲芸を取り入れた舞台剧のひとつです。オペラに似ているだけでなく、伝统芸能としての地位を筑いてきたことから、欧米では「チャイニーズオペラ」と呼ばれています。
京剧は清朝の时代に中国の北京で诞生したことから、そう呼ばれるようになりました。北京から中国の各地に伝わり、1949年に中国がふたつに分裂し、国民政府が台湾に渡ってきた际に台湾で公演していた多くの京剧俳优がそのまま台湾に残りました。京剧を重视した当时の政府は、军队に多数の剧団を设け、台湾のほとんどの名优がそのいずれかに属していました。そして频繁に公演を重ねることで、台湾での京剧の発展の础を筑いてきたのです。また、民间が创设した京剧を学ぶための学校「复兴剧校」(现・国立台湾戏曲学院)が、後に国立学校になり、台湾で多くの优秀な京剧俳优を辈出し、台湾での京剧の地位を不动のものとしました。
台湾で受け継がれた京剧の中心地、台北
台湾で受け継がれた京剧の中心地になっている台北。台北市が毎年授赏している「台北市传统艺术艺师奖」(台北市伝统芸能师赏)の受赏者のうち、戴绮霞、曹复永(以上2012年受赏)、曲复敏(2013年受赏)は、台湾を代表する京剧俳优として名が知れ渡っています。
90歳を超える戴绮霞は裕福な家庭で育ち、母方の祖母と母亲の戴凤鸣が京剧俳优だったことから、小さいころから京剧に亲しみ、7歳で弟子入りし、9歳で初舞台を踏み、16歳で京剧俳优としてデビューを果たしました。京剧をこよなく爱し、自ら剧団を立ち上げて台湾各地で公演し、军队の剧団に所属していたこともあります。また、复兴剧校で教鞭を执っていたこともあり、1983年に京剧俳优养成所の「戴绮霞国剧补习班」を设立し、その一生を京剧にささげてきたことから、「京剧皇后」の异名を持っています。
曹复永と曲复敏は、复兴剧校の一期生で、优秀な成绩で卒业しました。香港の俳优一家に生まれた曹复永は、母亲が粤剧(広东オペラ)俳优で、子どもにも自分と同じ道を歩ませようとしていました。そんな时、ちょうど复兴剧校の一期生の募集が香港でもあり、10歳という若さでひとり台湾に渡って京剧を学ぶことになりました。男性の役柄「生」を専门に演じることにした曹复永は、书生の役作りのために书道を学び、地道に稽古を重ねました。そうして若い男性の役柄「小生」の演技の型を作りだしたことから、「永远の京剧小生」と呼ばれています。また、若いころ女性の役柄「旦」の演技を学んだ曲复敏は、透き通った重みのある节回し、眉目秀丽な姿、大胆なしぐさが特徴の京剧俳优です。中年になってからは、老女の役柄「老旦」を主に演じ、京剧界で活跃し、台湾屈指の老旦俳优になりました。両氏は京剧を後世に伝えるため、国立台湾戏曲学院で後进の指导にあたっています。
京剧の监赏方法
京剧には「行当」と呼ばれる「生」「旦」「净」「丑」の4种类の役柄があり、化粧や隈取りの违いでどの役柄かがわかるようになっています。まず、「生」は男性の役柄、「旦」は女性の役柄で、どちらも主役であることが多いです。化粧は「俊扮」と呼ばれるもので、カラフルな隈取りはしていません。続いて「净」ですが、これも男性の役柄で、隈取りをすることから「花脸」とも呼ばれています。豪快で正直で无鉄炮な性格だったり、逆に阴険で残忍な大男だったりすることもあります。最后に道化役の「丑」ですが、鼻を白涂りにしてから隈取りをすることから「小花脸」とも呼ばれ、一番区别がしやすいです。
さらに京剧にはいくつかの特徴があります。まずは「様式化」です。京剧では美的感覚が重视されるため、舞台上のすべての动きが舞踊のように美しくなければならず、手の动き、歩き方、しぐさ、立つ向きが様式化されています。例えば旦の役柄を演じる俳优は、「兰花指」と呼ばれる手の动きをしなければなりませんし、歩くときは小股、急いでいるときも小股で急がなければなりません。転ぶときですら「滑步」や「屁股坐子」と呼ばれる美しい动きをしなければなりません。
そして2つめの特徴が「夸张された演技」です。小生が得意になっているときは、「ハハ、ハハ、アハハハ」と大げさに笑い、旦が泣くときは「うわあ」と大きな泣き声を上げます。また、激しい戦いの後は、胜者が舞台上で内容とは直接関系のない刀や枪を振り回して、胜利を喜ぶのです。
最后に3つめの特徴が「约束事」です。京剧の大道具は极端に少なく、よくある舞台上に机ひとつとイスふたつしかないシーンであれば、そこは後宫(王宫の大奥)であることを意味しています。また、俳优の目线やセリフから、何をしているのかがわかるようになっています。例えば舞台上に扉がなくても、俳优が「しばし待たれよ」と言ってドアを开けるしぐさをすれば、そこに扉があることがわかります。また、舞台の中央を急ぎ足で回る「跑圆场」と呼ばれる动きをすれば、数10歩で长い道のりを歩いてきたことを意味し、戦争のときであれば、10数人で千万の兵队を意味するのです。
京剧俳优は厳しい稽古を重ねて初めて舞台に立つことができます。京剧の基本は「四功五法」と言われ、うち「四功」が指すのは、「唱」(节回し)、「念」(セリフ回し)、そして顔の表情と动きで演技する「做」(しぐさ)、武术に长けた役柄に必要な「打」(立ち回り)です。また、「五法」が指すのは、「手」(手の动き)、「眼」(目线)、「身」(体の动き)、「步」(歩き方)、そしてこの4つを运用する「法」です。
台北で京剧が见られるところ
中山北路の台北戏棚(台北戏棚)と迪化街の大稻埕戏苑では、京剧の公演が行われています。台北戏棚では、毎月演目の入れ替えが行われ、8月3日までは、毎周月、水、金、土曜日に台北新剧团による『八仙过海』が上演されています。また、中国语のほか、日本语、英语、韩国语の4ヶ国语に対応した字幕付きで上演されるほか、上演前と中休みに俳优が観客と交流するので、外国人も京剧の魅力に触れられます。
また、大稻埕戏苑の9阶の剧场では、9月14日と15日に国立台湾戏曲学院による『金秋京喜─春草闯堂』と『金秋京喜─双峰奇谭丁甲山、青石山』が上演されます。京剧に触れてみたいなら、是非、足を运んでみてください。